2020大阪歴教協 社会科講座の報告

2020大阪歴教協 社会科講座

「地域に学ぶ/地域の教材化をどうすすめるか」

2月1日(土)に、金蘭会中・高校を会場に「わかる授業 楽しい社会科に」を開催しました。

 第1部は、小学校部会の岡崎謙太郎さんの「教材資料集『淀川』をつくる 活かす 遊ぶ」から学びました。16年前に小学校部会が中心となって発行した「教材資料集 淀川」を、もっと子どもに分かりやすく、おもしろく、大人にとっても役に立つものにしたいと「大阪・淀川教材研究会」で改訂版を作りました。淀川の水はどこから流れてきて、私たちの生活とどのようにかかわっているのだろうか。大阪は、淀川とともにどのように変わり、洪水を防ぐためにどんなことをしてきたのだろうか。自分と関わりのあることとして考えてほしいという岡崎さんの思いが伝わってきました。岡崎さんのクラスの生徒の作文も交えながらの聞いていて楽しい報告でした。淀川河川レンジャーの方々の協力で実施された、城北ワンドでの校外学習の報告は子どもたちのイキイキとした顔が浮かんできました。

 第2部は、パネルディスカッション「地域に学ぶ / 地域の教材化をどうすすめるか」です。岡崎報告を受けて、高校の日本史実践、小学生の大和川学習と市民運動、小学校社会科で追求してきた「地域の教材化」の報告をもとに「地域に根ざす」ことの意味をみんなで考えました。

 浅井義弘「地域から考える日本の歴史」は、小学校の先生方の、地域調べ、校区のお店、工場調べと発表という学習方法に学び、「聞き取り」や地域のフィールドワークも取り入れている。「聞き取り」、フィールドワークそのものが、自分たちで歴史を調べる主体的な学習であること。ICTの活用は有効な部分もあるが、生徒には実物教材の方が印象に残っている。学校で植えている「木棉」から日本と世界の歴史を学ぶことができる。例えば、大和川の付け替えと新田開発(堺では三宝新田など)、商品作物としての棉。棉の不作で、年貢延納願いを出したが、認められずに立ち上がった和泉国一橋領の百姓たち(千原騒動)。そして摂津河内和泉の百姓たちによる国訴。近代史では、大阪紡績会社で学ぶ産業革命。産業革命で河内木綿はその後どうなったのかなどを紹介。一粒のワタの種から日本と世界の歴史を考えることができる。地域のフィールドワークや実物教材で、生徒は歴史を身近に感じるようになり、学習意欲が高まると。ICTだけではこの学びはできない事を報告。

 小松清生「地域学習~川とくらしの学習~市民活動へ」は、地域学習の魅力を、①子どもたちが住み育つ地域が教材になる。②具体物を通した理解。体験・見学・調べ活動は楽しい。③くらしと地域の目で、本質に迫る。④父母・祖父母・地域の方々に助けられ、楽しく学ぶ。⑤父母・地域に応援される学習と学級づくり。⑥地域の現実を学び、願いを育てることは、主権者を育てる教育。⑦地域の先人、保護者、市民、専門家との出会い、子どもも教師も育つ。⑧仲間としての努力が、さらに広い出会いと協力のネットワークを広げるとまとめられている。その上で大和川学習の魅力、ご自身の新任教師のころから取り組んでこられた「五箇荘かるた」「大和川かるた」などの実践、「わたしたちの大和川」の編集・執筆のこと、堺の伝統産業、平和学習の実践、退職後も続けておられる大和川市民ネットワークの活動などを報告。

 河内晴彦「地域から学ぶ / 地域の教材化をどうすすめるか」では、地域についてこう捉えられている。地域は、身近にあるもの(空間認識)だけでなく「生活台」としてとらえること。地域からの視点は、地域と地域を比べ、地域から日本全体を見る、東アジアという地域を見ることである。地域の課題は「まちづくり」の視点で考えることが大切であると。学年の目標に関連させて、その教材で何を教えるのか。どんな学習方法が適切かで教材化をすすめたい。人物の取り扱いでは、人物には様々な側面があり、「偉人伝」にはしない。ICTは入り口にすぎない。ヒトに出合わせ、古地図や史料などのホンモノに出合わせたい。博物館の学芸員さんの協力を得たいと。ご自身の「河内もめん」の教材化、「大和川学習」を紹介され、国土交通省「水と川学びのススメ」を批判的に検討されたことを報告。

 報告の後、井ノ口貴史さんのコーディネートで、報告を深めました。「地域に根ざすとは。何を深めていけばよいのか。」「世界史から地域をどう見るのかは難しい課題だ。シャッター通りの商店街という現実があり、外国人労働者も多数住んでいる。過去・現在・未来。発達段階に応じた教材をどう作るのか。」「見て、聞いて調べる体験。地域の大人たちとのつながりが大切で、そこから市民道徳が形成される。」「地域から世界へ。世界から地域への双方向の学習が大切だ。」「よい地域を作ろう。地域を学んで歴史が見えてくる。これは主権者教育である。」などの意見が出されました。

<感想>

(M Oさん)
 地域学習についてのお話を聞かせてもらう中で、自分の担任する学級の子どもたちにもっと実物を見せたり、フィールドワークをしたりする中で、自ら興味を持って学習できる環境を作りたいと思いました。

(H Kさん)
 地域学習の切り口から様々な方面へ話がひろがって、改めて社会科は奥が深いと思いました。子どもたちが「知りたい!」「これについて調べたい!」と社会科を身近に感じてくれるような授業をしようと思いました。

(A Nさん)
 「地域から学ぶ/地域の教材化をどうすすめるか」という言葉は、参加させてもらうまで難しいなと思っていましたが、本物に触れさせること、その中で人と出合わせることが自分にとっては大切になるのではないかと思いました。地域をまず知ることで生活実態を知り、社会にはどんな課題や矛盾をはらんでいるのか、それを考えさせられる契機になったと思います。ありがとうございました。

  

授業づくりについて学び合えました!(社会科講座)

授業づくりについて学び合えました!
―大阪歴教協 社会科講座―

 2月23日(土)に金蘭会中学・高等学校で大阪歴教協の社会科講座が行われました。

 最初に堺市立福泉中学校の中岡隆之さんの地理の実践「深い学びに導く地理的分野の授業開発-北海道での米作りを考える―」でした。「よく解って、楽しい授業」が良い授業ではなく、「すぐには解らないけれども、楽しい授業」
を目指して、解らないことを教員の提示した資料などをもとにして、生徒が主体的に学んでいく授業を作って行かれました。
 
 続いて、大阪府立山田高等学校の永瀬弘勝さんが「まぐれ・気まぐれの日本史教材研究」と題して、これまでの教員生活の中で、活用した教材、旅行中に撮影した写真、駅のスタンプ、各地の土産物などを日本史の授業の中で、どのように活用したかを教材研究や授業そのものへの姿勢も含めて、語られました。

 それ以外にも、ワークショップとして教材・教具の交流広場も行われ、3・1独立宣言、綿の種や和田峠の黒曜石など、珍しい教材を手に入れて、満足した方もおられました。最後に全体討論で、いろいろな思いを語り合いました。

 参加者の感想を紹介します。

「主体的、対話的、深い学び」この定義について考えさせられる会となりました。
 単元における主となる問い(テーマ)を生徒から導き出すことが「主体的」なのではないか。自らが興味を持ったテーマを「対話的」に学ぶことが真の「深い学び」ではないか。という意見にはっとさせられました。
 どの方のお話や意見も、とても勉強になることばかりでしたので、また、機会があれば、参加したいと思います。ありがとうございました。

 今回、参加させていただき、中学校の実践を聞き、刺激になりました。
 小学校で学ぶことが中・高とつながっていることが分かりました。だけど、実際は先生によって、差がある状態です。「社会、たのしいなあ」「こんなんも知りたいなあ」と思わせる授業が主体性につながると思って、実践を続けたいなと思いました。
 永瀬さんの生活や経験が実践に生きてくる!という報告も楽しかったです。生活を実践につなげるには、日頃、そういう視点を持っていないとできないです。自分もやろうと思いました。ありがとうございました。

◯中岡さん→非常にきっちりされた研究でした。構造的に問い、仮説、筋書きを設計して、授業をつくる際のコツを教えていただきました。
◯永瀬さん→遊び心、大切ですね・すっかり忘れていました。楽しさをもっと追求していきたいです。
ありがとうございました。

 お二人の報告、面白く、為になりました。
 中岡さんのクラスの子どもたちの学びはどんなものか。主体的というのはどういうことか。どこが間違っているか?よく解りました。
 永瀬さんの報告は導入としての楽しさとともに、歴史学習の楽しさを身につけさせるのに、こう役立つというのも良かった。